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No.010 かぐや姫

 その年の春先から、かぐや姫はどうしたわけだか、月のよい晩になると、その月を眺めて悲しむようになりました。それがだんだんつのって、七月の十五夜などには泣いてばかりいました。翁たちが心配して、月を見ることを止めるようにと諭しましたけれども、
「月を見ずにはいられませぬ」 と言って、やはり月の出る時分になると、わざわざ縁先などへ出て嘆きます。翁にはそれが不思議でもあり、心がかりでもありますので、ある時、そのわけを聞きますと、
「今までに、度々お話しようと思いましたが、御心配をかけるのもどうかと思って、打ち明けることが出来ませんでした。実を申しますと、私はこの国の人間ではありません。月の都の者でございます。ある因縁があって、この世界に来ているのですが、今は帰らねばならぬ時になりました。この八月の十五夜に迎への人たちが来れば、お別れして私は天上に帰ります。その時はさぞお嘆きになることであろうと、前々から悲しんでいたのでございます」
 姫はそういって、ひとしほ泣き入りました。

wikisource - 竹取物語 現代語訳 より

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 この作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用の
イラストとして、白銀・詩音PL様 が作成を依頼したものです。
 イラストの使用権は白銀・詩音PL様 に、著作権は柴司絵師様に、
全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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